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「コーヒー 珈琲 Coffee」

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 最初にコーヒーを飲んだのは、いつ頃のことだろうか?

小学生の時のネスカフェだったかも知れない。そのうちに家族の誰かがサイフォンを買ってきて我がコーヒー道はスタートした。理科の実験に使うような道具が珍しくて、いちいちコーヒーの粉を入れる兄の手つきや、アルコールランプの着火ぐあいをじっと覗いていて、やがてにごった液体が下に降りてきて、澄んだコーヒーが出来上がる過程を飽きずに眺めていたものだった。
それは、一つの儀式だった。

まだ子供だった為、そのままでは飲めず、ミルクと砂糖を入れて飲ませてもらった記憶がある。 やがて、コーヒーのバリエーションがわかり、豆の種類を覚え、焙煎の具合を知り、どうやら自分の好みがわかるようになった。どうもチョコレートと同様で、苦みの強い味が好みで、紅茶とまちがえるようなアメリカンコーヒーは、正直あまり仲間として認めたくない。エスプレッソは大好きだが、一般的なコーヒーとして飲むには、フルシティからフレンチあたりの焙煎が好みである。

 コーヒーをあいだにして、どれくらいの人と会ったのだろう?

印象的なエピソードを一つ。ずい分昔、10代の終わりごろに2つ年上の女性と仲良くなった事があった。こちらは学生、向こうはピアノの先生で、その年の元旦に待ち合わせをして初詣に出かけた。とても寒い日で腕を組みながら神社の階段をヨロヨロと登っていった。おみくじを買い、お互いの運勢に一喜一憂して、とりとめのない会話をずっとしていたが、会話の途中であなたの電話の話し方はブッキラボウだとか、そういう時はこうした方がいいのよとか等々、たしなめられていたような気がする。どこかで暖かい飲み物でも、と喫茶店に入った。雪がちらついた窓の外を見ながら、二人でウインナコーヒーを飲んだ。その時の彼女は珍しく黒のブーツを履き、いつもより濃い目の口紅の色だった。両手でカップを持ち、一口ずつそっとそっと飲んでいた。クリームが唇にまとわりついて、一言つぶやいた。「やだ、口紅が落ちちゃう・・・」と、少し上目使いにこちらを見た一瞬の顔は一生忘れられない。今であれば状況に応じた適切な行動がとれるのだろうが、若かった私は恥ずかしそうにニコニコ笑っている彼女の顔に見とれているだけだった。表面は甘いクリームの味がしたが、中身はしたたか苦いコーヒーの味のギャップにとまどうしかなかった、ほんとうに愚かで元気で、熱くて寒かった冬の日だった。


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